04.目覚まし代わり!?
いつものように優しい声がかけられるのを待っていた。
いつも聞いている声が、朝の挨拶の時だけは凄く甘く囁いてくれるように感じるから。
でも、今日は少し違っていた。
「・・・んっ・・・・・・?」
意識は目覚めているけれど、身体はまだ夢うつつ。
そんな中、唇に柔らかな物が触れているのに気づいてそっと目を開けると・・・そこにいたのは、いつもと違う様子の彼。
「・・・」
あたしが目を開けても動揺する事なく、ゆっくり顔を離すと手に持っていた眼鏡をかけて小さな声でいつもの言葉を口にした。
「おはようございます、。」
「・・・有川、くん。」
「良く寝ているから起きないと思ったのに、予想外だったな。」
「・・・い、今。」
「いつも寝覚めが良くないみたいだから、今日は趣向を変えてみたんです。」
そこまで言われても何が起きたのか良く分からず、ぬくもりの残る唇にそっと手を添える。
「でも、出来ればもう少し早く目覚めて欲しいですね。もし俺以外の人間があんな風に手を出してきたらどうするつもりですか?」
「あ、あんな風って・・・」
分かっているのに、ついそれを口にしてしまい、逆に頬が熱くなる。
そんなあたしの様子を見て、つられるように頬を染めた譲くんが顔を近づけて耳元にそっと囁いた。
「・・・キス、ですよ。」
「!!」
「いい目覚まし代わりだったでしょう?先輩も起こさず、だけを起こすには。」
「有川く・・・!」
声を上げかけた口を譲くんの大きな手に塞がれた。
「二人でいる時は名前で呼ぶ約束ですよ。」
「・・・っ!」
「大丈夫。先輩はこれくらいじゃ起きませんよ。幼馴染の俺が保障します。」
「・・・」
「先輩を起こすにはまだ早いから、少し散歩でもしませんか?庭先に植えた花が、咲きそうなんです。」
にっこり微笑みながら口を塞いでいた手をどけて、その手をあたしの前に差し出す。
向こうでは見れなかった彼をひとつひとつ知っていくうちに、どんどん好きだという想いが強くなる。
「・・・譲くん、最初から散歩が目的だったの?」
「いいえ、違います。・・・俺の目的は、誰よりも早く大好きな人を起こす事ですよ。」
そう囁きながら、頬に軽く乗せられた唇。
これ以上強力な目覚まし時計はない、と思った瞬間だった。